芳香族カルボン酸

 ベンゼン環の水素原子をカルボキシ基-COOHで置換した形の化合物を芳香族カルボン酸という。

 
 

芳香族カルボン酸は染料や医薬の原料になるほか合成樹脂や合成繊維の原料として用いられる。

 芳香族カルボン酸はベンゼン環に結合したR−(炭化水素基)を酸化すると得られる。このとき,炭化水素基はベンゼン環に結合している炭素原子が酸化されCOOHになる。そのため,炭化水素基は炭素原子の数に関係なくCOOHになる。例えば,安息香酸はトルエン(R−=CH3−)やエチルベンゼン(R−=CH3CH2−)を酸化剤である過マンガン酸カリウムKMnO4の水溶液に加え煮沸すると,安息香酸のカリウム塩ができるので,これに酸を加えて安息香酸を遊離させる。

 
 

 

フタル酸

 o-キシレンを酸化するとフタル酸が生成する。しかし,フタル酸の2つカルボキシ基は,接近した位置にあるので,容易に脱水され無水フタル酸になる。結局,o-キシレンを酸化すると無水フタル酸が生成する。この反応はナフタレンでも起こる。

 
 

テレフタル酸

 p-キシレンを酸化すると得られる。2つのカルボキシ基は離れた位置にあるので,無水物にはならない。

 
 

 テレフタル酸とエチレングリコールを縮合重合させると高分子化合物が得られる。この高分子化合物はポリエチレンテレフタラート(PET)といわれる。 
 

サリチル酸

 サリチル酸はナトリウムフェノキシドを高温高圧下で二酸化炭素を作用させ,得られたサリチル酸ナトリウムに酸(希硫酸,希塩酸)を作用させると得られる。

 
 

 サリチル酸は-OH-COOHの両方を持つ芳香族カルボン酸で,フェノールとカルボン酸の両方の性質を示す。そのため塩化鉄(V)FeCl3水溶液で呈色を示す。

 サリチル酸に無水酢酸を作用させると,-OHの部分が反応(エステル化,アセチル化)して白色針状結晶のアセチルサリチル酸になる。またメタノールと濃硫酸を作用させると,-COOHの部分が反応(エステル化)して強い芳香をもつ油状(液体)のサリチル酸メチルになる。アセチルサリチル酸は〔 解熱鎮痛剤 〕,サリチル酸メチルは〔 消炎鎮痛剤 〕(外用塗布剤,湿布薬)に用いられる。